仕事のシーンでオンライン化の占める割合が高まっている今日このごろ、物理的な距離に関わらず、より質の高いコミュニケーションが求められていると感じています。日本人が得意な「あうんの呼吸」や「空気を読む」なんてことが難しくなってきた今だからこそ、コミュニケーションをより良いものにしていきたい。そんな思いで筆を執らせていただいた本コラムです。

このコラム「だから、わかりあえなかった。」では、MBTIという性格検査をベースに、みなさまの職場でのよくある悩みについて、解決のヒントをお届けしていきたいと思っております。ご一読いただき、日々のお仕事にお役立てていただければうれしいです。どうぞよろしくお願いいたします。

 

先日、結婚式のお仕事をいっしょにしているお花屋さんからこんな相談ごとを受けました。

「新しく入った人への引き継ぎが難しくて。打ち合わせに同席してもらっているんだけど、イメージの部分をなかなか捉えてもらえないんですよね。『シュッとした感じ』とか『ふんわりした感じ』とかが、なかなか伝わらなくて」とのこと。

お花を扱うクリエイティブなお仕事においては、イメージで会話がなされることも多いと思います。そうでなくても私も日頃、上司や同僚から「いい感じで!」とか「なるはやで!」と仕事を依頼されることがあります。その時はノリよく引き受けるのですが、改めて考えると「はて?いい感じとは?なるはやとは?」と、後から確認しないといけないこともしばしば。ある程度 経験を積んで、その人の感覚も分かればイメージはつかめるものの、細かいところまで確認せずに初めてしまい、思い込みでやってしまって大失敗なんてことも過去にはありました。

 

実はこれは、個人の「情報の取り方」の機能の違いによって起こるミスコミュニケーションなんです。人には情報の取り方の機能が二種類あり、全ての人が両方を備えているのですが、どちらか一方をよりよく使う傾向があるとされています。右利き、左利きと人によって利き手があるように、情報の取り方も、何も考えずに自然に選んでしまうタイプがあるのです。

二種類のうち一つは、今起こっている事実やデータから情報を得る感覚(Sensing)機能といい、もう一つは、イメージや言葉の背景から情報を得る直感(Intution)機能といいます。いずれも日本語の「感覚」や「直感」とは異なる意味合いで表現しているので、誤解を避けるために、感覚機能が利き手の人をSensingの頭文字からSタイプの人、直感機能が利き手の人をiNtutionのNタイプの人と表現します(なぜ二文字目のアルファベット?と思われると思いますが、頭文字Iを使ったタイプは、また別のところで出てきますのであしからず)。

 

Sタイプの人は、物事を事実やそのものから正確に情報を得ようとする傾向があります。前述のお花屋さんの例だと「シュッとした」「ふんわりとした」というニュアンスの表現は、Sタイプの人にとってはなんとなくわかるものの、不安が残るはずです。このタイプの人には、「何センチくらいの長さ・大きさで」とか、「シュッとした表現にはこの種類の百合を、ふんわりとした表現には淡い色の芍薬を使う」などそもそもどのお花や色合いでそのニュアンスが叶うかを、具体的に伝えてあげた方が納得感が高まります。

逆にNタイプの人は、事柄を具体的・明確にすることが少なく、なんとなくのイメージで会話してしまうことが多い傾向にあります。一言聞いただけで全体像が見えてきたり、どんどん他のアイデアも思いついてしまったりするのがこのタイプの特徴のひとつです。うまくいく場合はいいのですが、少しのずれが重なり続け、アウトプットが思っていたのと全く違う、なんてことも時には起こります。そのためにも、イメージやニュアンスの表現だけではなく、具体的に正確に示す、利き手と逆のSタイプを使うことに意識を向けることが大切です。

同様に「いい感じに」や「なるはや」も、納期がいい感じなのか、売り上げがいい感じなのか(そもそも「いい感じ」ってどういう状態かの定義付けも必要ですね)、何月何日の何時までがなるはやなのか、をちゃんと指示することで、こちらが期待した成果が的確に得られるはずです。

相手を変えようとするのではなく、自分の見方を変えていく。自分の利き手を意識して、より効果的に伝えたり、反対側のタイプを意識して表現することで、どんなタイプの人ともコミュニケーションがうまくとれるようになる。適切な場面で適切な表現ができるように、ぜひ自分のタイプを見つめるところから始めてみてください。

 

(文責:平山)

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