
海外のパートナーとメールをしているという友人から、こんな相談を受けました。
「仕事の連絡なのに、やたら彼が“feel”とか“feeling”っていう単語を使うんだよね。“僕の気持ちを分かってくれない”みたいに書いてあるんだけど、そもそも仕事に感情って必要…?考え方が違いすぎて、返事をするのがちょっと億劫になってしまった」とのこと。
英単語を直訳すると「気持ち」となり極端ですが、日々のこういうやり取りはよくあります。
「全力で頑張ります!」「絶対にやります!」などといった仕事への姿勢を表したり、「この決議を見たらみんながざわざわしないかしら」とメンバーの感情を気にしたり。もちろん、仕事のシーンでも気持ちや感情は大切にすべきです。よっぽど合理的な何かがない限りは、思いのこもっていない仕事に誰かが動くことはありません(と信じたい私です)。
でも実はこれも、性格のタイプの違いによって起こるミスコミュニケーションです。
前回、性格には利き手があるというお話をしました。
前回は情報の取り方の利き手でしたが、今回のご相談は 人の性格における「結論を導き出す」機能の利き手の違いによるものです。
得られた情報からひとつの結論を導くときに、思考(Thinking)機能と感情(Feeling)機能と二つの機能が働くと言われています。これも、日本語の意味との誤解を防ぐために、思考機能が利き手の人をTタイプの人、感情機能が利き手の人をFタイプの人と表してお話しさせてください。
Tタイプの人は、起こっている事象から、常に距離をおいて客観的に分析します。「このケースの目的はなんだろう」と、みんなが納得できるような論理や合理的な指標をもとに物ごとを結論づける傾向があります。一方Fタイプの人は、起こっている事象の中に、自分をおいて主観的に判断します。「私だったら…」と考えて、人の気持ちや感情を大切にし、どうすればみんなが気持ち良くいられるかを重視して判断する傾向があります。

相談してくれた友人の海外のパートナーの方は おそらくFタイプのようで、ビジネスでも自分の思いを大切にしながら仕事を進めていきたいようです。しかし私の友人は真逆のTタイプなので、プロジェクトの実現のためには個人の感情はあまり関係がなく、どのようにして達成ができるのかを最重要視していました。
「あなたの気持ちが分からなくて申し訳なかった。これからは理解できるように配慮するね」と伝えてみて、とアドバイスすると、メールを送ってすぐに彼から電話があり、喜んでくれていたとのことでした。
同様に「全力で頑張る」や「絶対やる」という表現も、Tタイプの人からすると、仕事は頑張ってするのが当然という感覚があるので「当たり前のことでは…?」と思ってしまう傾向にあります。でもFタイプの人は、姿勢を示すことで相手の期待に応えたいと思っています。
また「ざわざわ」といった感情表現は、Tタイプの人はなかなか理解ができません。常に変化し目に見えない個人の感情を指標とするよりも、論理的な背景や理由で判断した方が、Tタイプの人にとっては明確で公平であると捉えている傾向があります。
これも一概に、どちらがいいとか悪いとか、ビジネスに向き不向きだとかいう問題ではありません。Tタイプの人は冷たくて、Fタイプの人があったかいとか、そういうことでもありません。組織で働く上では、BeingとDoingと言うように、感情も目的も同様に大切にすべき事項です。
だからこそ 利き手が逆の人とコミュニケーションをとる時は、少しだけ相手のタイプを意識して行動すると、相手の言動を、より的確に受け取れるようになるはずです。Fタイプの人には気持ちや思いを添えて、Tタイプの人には論理的な理由を添えて関わるだけで、相手の納得感がかなり変わってくるはずです。ぜひ相手のタイプの見ている世界に合わせて、歩み寄ってみてください。
(文責:平山)