日々 たくさんのお客様を店頭でお迎えする中で、「素敵だな」と印象に残る方がいます。先日、このテーマで店舗のスタッフと話していたら、ほぼ全員が挙げるおしゃれなお客様の共通点がありました。

それは、“靴”です。

私自身、靴にはいくつか思い出のエピソードがあります。

新入社員時代、「メゾンブランドの靴を一足購入するべし」というミッションがありました。弊社オリジナルブランドの靴も誇れる商品なのですが、スタイリングの格を上げてくれることはもちろん、老舗の接客や商品の勉強になるという意図が込められていると感じました。

良い靴を買うと決めてから 様々なブランドを回りましたが、なかなかハマる靴がありませんでした。金額が金額だけに、ちゃんと自分が気に入った靴を選びたいと思っていたのです。

そんな時にふらりと立ち寄ったのが、セルジオ・ロッシでした。当時一緒に働いていた先輩が、ロッシのブルーと黒のレオパードのパンプスを愛用していて、個人的にも憧れだったブランドです。緊張の面持ちの私を察してか、対応してくださった店員さんは不安を拭いとってくれるような安心感がありました。いろいろ履かせてくれて、一緒に笑ってくれて、いい意味でフランクで。

そこで、ヒールにゴールドのデザインがあしらわれた黒のエナメルパンプスに出会ってしまったのです。手持ちのお洋服にも合うし、履いていて気持ちがうきうきしそうな、特別な靴。ですが、あいにくそのタイミングでは店頭に在庫がなく、あぁこれも運命なのかなと遠慮しようと思っていたら、お取り寄せの手続きも嫌な顔ひとつせず「いいですよ!」と快く引き受けてくださって。入社2年目の私からすると、ずいぶん大きな買い物になった10万円のパンプス。どきどきしながら「3回払いで」とお願いしたことを覚えています(笑)。購入してからしばらくして お手紙を送ってくださり、最初から最後までさすがのおもてなしで、感動しました。

今季のDES PRÉSオリジナルブランドのシューズです

今もたまに大きなお買い物をすると、お店の方からお手紙をもらうことがあります。そのたびに背筋がシャンとしますし、自分もお客様に対して良い接客ができているかな、と自身を振り返るきっかけにもなります。弊社だとコートなどは大体6万円くらいしますが、そういったアイテムを選ばれている方には、やはり気持ちを汲み取ることが大切だなと常々感じます。パンプスとの出会いも運命的でしたが、店員さんとの出会いによって、この靴はより、私にとって思い出深い一足になりました。

それから今でも手入れをして履いている、長く楽しめるのがメゾンブランドの靴。

今から良い靴を購入しようかなと検討している方へのおすすめは、先述のセルジオ・ロッシはもちろん、マノロ・ブラニク、ジャンヴィト・ロッシ、クリスチャン・ルブタンなどはいかがでしょうか?美しいデザインの靴ながら、計算された歩きやすさも魅力の一つだと思います(が、必ず試し履きしてみてくださいね)。デザインがベーシックなものは、長く履けておすすめです。

イギリスブランドのルパート・サンダーソンは、弊社内でも取扱いがあって根強いファンが多い人気のブランドです。構造学を専攻した方がデザイナーなので、デザインが美しく、ヒールも安定していることからとても歩きやすいです。

 

とはいえ、メゾンブランドの靴に手を出すことが不安な方もいらっしゃるかもしれません。そんな方でも、靴のおしゃれに大切な今すぐにできることがあります。

実は私たちがお客様の靴を見るポイントとして、何を履いているかということよりも、きちんとお手入れをされているかということを重視しています。長年愛用されている靴を目にすると、「物を大事にされている方なんだな、きっとお洋服も愛を持って取り扱ってくれるだろうな」と、お洋服屋さんとして、ぐっとくるものがあります。

先日もブーツをお召しになられたお客様がいらっしゃいました。お手入れが行き届いていることが分かる美しさから、大事にされていることが伝わりました。試着室にご案内して、さっと脱がれたら実はサルトルで…という方でしたが、身のこなしも雰囲気もとてもおしゃれで格好良い方でした。

「素敵な靴は、素敵なところへ連れて行ってくれる」という言葉がありますが、やはり靴を大切に扱っていらっしゃる方は洗練されたオーラが漂います。サイズが合ってない靴でパカパカと歩いていたり、歩く度に音がしていると、あまり良い印象は受けません。

何も本格的にお手入れを学ぶ必要はありません。もちろんご興味がある方はぜひこの機会にどうぞ。私たちも、仕事中ずっと立ちっぱなしなので、靴のお手入れは必須事項です。メンテナンスに出すこともありますが、基本的には日々のお手入れを大事にしています。

革靴は、ほこりをとってクリームをちゃんと塗る。ショートブーツは革が柔らかくなるので一週間履いたら一週間休ませて履くなど、そんなルールを決めて守ればいいだけです。靴磨きセットも、簡易的なもので大丈夫です。まずは、日々の自分のパートナーでもある靴を、お手入れすることから始めてみてください。

 

おしゃれは足元から、とはよく知られている言葉ですが、ビジネスシーンを彩るアイテムの一つとして、まずは自分が愛せる一足を大切に、そして長く楽しめる美しい一足を、見つけてみてはいかがでしょうか。

 

(文責:DES PRÉS 銀座三越店 小山)

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