先日、Aさんから相談を受けました。

AさんはBさんと会話していたときに、Bさんの表情がくもったことに気づきました。その反応は、自分の発言のせいだと感じたために、注意深く話を聞くようにしたところ、Bさんはさらに不満げになってしまい、最終的には黙り込んでしまったということでした。挽回しようと話を聞いていたのに、それがかえって相手を不機嫌にしてしまったというケースです。

前回は、コミュニケーションタイプのそれぞれの利き手の組み合わせについてご紹介しました。復習になりますが、

・情報の取り方が、事実・データの感覚(S)機能かイメージや広がりの直観(N)機能か。

・判断基準が、対象から距離をおいて合理性や論理を大事にする思考(T)機能か対象の中に自分をおいて感情や個別の事由を大事にする感情(F)機能か。

この情報の取り方×判断基準の組み合わせが、同じタイプを指向していたとしても、考え方や価値観の違いを生み出す、というお話しでした。AさんとBさんのやりとりも、タイプに起因していると仮定して、本日はこの組み合わせの違いで生まれる感情の動きをご紹介したいと思います。

このケースもさることながら、お客様やメンバーと接する中で、良かれと思って行動したことが裏目に出てしまった経験はありませんか。仕事上だけでなくとも普段の生活の中で、家族に、パートナーに、友人に「こんなはずじゃなかったのに」とか「なんでこうなんだろう」とか感じることが、誰しも一度はあることと思います。情動、つまりこうした感情の動きもコミュニケーションタイプが影響していると考えられています。

まず、各タイプの思いやりの表現についてご紹介します。

感覚機能と思考機能の組み合わせ、STタイプは、明確な情報を提供すること、思い込みをしないことを、思いやりと捉えています。そして、何よりも効率がいいことで貢献したいと考えています。
感覚機能と感情機能の組み合わせ、SFタイプは、具体的な問題に注目することや、注意深く状況や人の詳細を記録することを思いやりとして表現します。
NFタイプの直観機能と感情機能の組み合わせを指向する方は、共感したり、傾聴したりして自身が情熱的にサポートをすることが思いやりと考えています。
NTタイプの直観機能と思考機能の組み合わせを指向する方は、戦略的で、全体最適な観点を提供したり、別の選択肢で得られる結果について会話をすることが思いやりと認識しています。

次に、情動の中でもネガティブな感情と捉えられやすい怒りも、どういった原因で生み出されるか違っています。
怒りは、同意してもらえない、期待が満たされていないとき、そして不適切な扱いを受けたと感じるときに生まれる感情です。この、怒りを生み出す「不適切な扱い」の認識が、タイプによって大きく異なっているのです。

STタイプは、詳細に対する留意点が欠落していたり、なぜそうなったのかの確認が不足していることが怒りになりやすいとされています。具体的に説明された通りにフォローがなされていない、効率が悪い、などもこのタイプの人たちを怒らせる原因になります。
SFタイプは、個人的や要望に対応できないときや、取り組みに対しての努力が認められないとき、配慮不足に怒りを感じやすいとされています。
NFタイプは、見下された態度や無神経さ、個人的なニーズよりもタスクに注意が向けられること、批判されることや認められないことに怒りを覚えやすいです。
NTタイプは、能力の低さやロジックの欠如、実力を発揮しないことが怒りの原因となります。

自分のタイプだと嬉しいことも、とあるタイプからすると求めていないことかもしれません。
AさんはNFタイプなのですが、Bさんとの会話で自分が怒らせてしまったと思ったことから、話をよく聞き共感しようとしたところ、(本来推測するのは御法度ですが)おそらくSTタイプのBさんは、事実を確認せず憶測で行動されたことに不満を覚えたと思われます。実際のところ、STとNFの違いは、お互いについてのもっとも悪い解釈を無意識に増幅させるような対の構造になっています。このような場合は、どうしたらいいのでしょうか。

いままでもお伝えしてきましたが、このコミュニケーションタイプを一方的な判断軸として使用したり、建設的に行動できないときの言い訳にしたりしないことが大切です。

相手が求めていることは何か、相手の立場になって考え、行動すること。
このタイプはこうだから…などと判断するのではなく、自分の感情や相手の見方を理解して、多様性を認めるためのヒントとして、活用していただきたいと思います。

 

(文責:平山)

 

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