このように、競争には終わりがないものです。そして、相手を打ち負かすためではなく自己の提供価値を上げるためのものであり、終わりなき自己改革こそが仕事なのだとも言えます。
ですから自己変革にどれだけ向き合えるかが、競争力にとって大事なカギになります。
没頭するとか夢中になるとか、そういったことが競争力を強めるために重要だということから、とにかく「好きなことを仕事にする」と提言する人もいます。
また、競争の概念を考えなくても世の中には「好きなことを仕事にする」という声も少なくありませんし、このことは多くの見解が生まれている話題だと思います。
私たちは、「好きなことを仕事にする」ことも否定はしませんが、少しだけニュアンスが違います。

確かに「好きなことを仕事にする」と成功する確率が高いかもしれません。しかし、そうでないと成功できないとも思えません。
実際に「好きなこと」をみつけて、さらにその職業につける人が世の中にどの程度いるでしょうか。ほとんどの人は仕事をはじめるときに、本当に「好きなこと」をわかって就職活動できていないのではないでしょうか。「好き」という事実ではなく「好き」という思い込みかもしれません。
今まで述べてきたように、競争とは自己の提供価値を上げるための終わりなき自己変革とするならば、その自己変革がしっかりと行われ続けることが、長期的に見た個人の強みになります。
「好き」かどうかよりも「自己変革」が長きにわたって行われ続けるかどうかが重要なのです。そして、その自己改革を続けるために、そのプロセス自体を「好き」になれることが成功の近道だと考えています。どうせ取り組むのであれば、夢中になれる方が楽しいはずです。

私たちが実業を今まで行なってきた上での感想としては、「好きなことを仕事にする」のではなく、「仕事を好きになる」という言葉がぴったりと感じていますが、「仕事に誇りをもつ」とか「仕事の責任を全うする」とかでも良いわけで、それはどちらが正しいというものではありません。いずれにしても、仕事における自己改革を続けていくプロセスを主体的に、永続的に行えるかどうかということに尽きると考えています。
つまり「好きなことを仕事にする」のではなく、「仕事を好きになる」ことのほうが重要なのだと考えています。
「好きなことを仕事にする」でエネルギーが湧くのであれば、それはそれで素晴らしいことですが、そのことにコンプレックスや悩みを持つ必要はありません。
重要なのは、終わりなき自己変革を、高い確度で行い続けられるかどうかなのです。
そして、会社としても個人としても仕事に誇りを持ったり「好き」になるための様々なアクションが時折取られていたりすることも重要なのです。